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(1) 第1次地上復帰

(1) 第1次地上復帰

本文

[特段のノウハウが必要]
[ノウハウは社会的集団]
[感覚器動員の群れ]
[群れの吸引力は恐怖心]
[大脳新皮質的なサルの社会的集団]

・サルの地上復帰は、まず、樹上と地上の両棲類的生活者になり、その後改めて、完全地上棲になるというように、2段階に分けて行なわれたようである。
・サルの第1次地上復帰は、今から千数百万年前に行なわれたと推測されている。そのとき地上復帰を果たしたのは、人類と類人猿の中の3種(ボノボ,チンパンジー,ゴリラ)と旧世界ザルの一部の種(日本猿,狒々等のマカク科のサル)であった。
・サルの地上復帰は、生物の上陸、爬虫類の内陸部進行、鳥類の空への進出、哺乳類の適応放散の場合とその条件が違う。それ等はみな、先住者のいない空白の地に乗り出して行ったものであった。それに対して、サルの場合は、先進的な哺乳類達が完全に分割占拠している生態的時空(地上)への進出なのである。だから、サルのポピュレーションが多くなったからと言って、そう簡単にサルの思い通りにはならない。
・人間の場合の地上復帰については「頭がよくなり、道具(武器)が使えるようになって、その実力で地上復帰を果たした」というように考えてしまっている人が多い。エンゲルスも『自然弁証法』の第1分冊の《サルの人間化成に当っての労働の役割》という論文で、そのように述べている。だが、道具など全く使わない日本猿が地上復帰を果たしている以上、道具をサルの地上復帰の実力とする分けには行くまい。
・地上復帰しているサルの、他の動物と違う第1の特徴は、社会的集団を構成している点である。
・大分県の高崎山などでは、その離れザルが、よく狸などに食い殺されていることがあるという。サルというのは、1頭でいると、屈強の若者でも、狸にさえ勝てないひ弱な動物なのである。そのひ弱なサルでも、群れを組んで居さえすれば、雄(おす)より遥かに非力な雌(めす)や子供までが、無事に生きて行けるのである。そうしたことから、サルの地上復帰の実力が社会的群れであることはほぼ確実である。
・動物の作る群れには種々のものがある。感覚器の動員効果があるので集まるもの。生殖のチャンスを高めるために集まるもの。保温のためのもの(天幕毛虫)。巨大な動物に見誤らせるもの(ゴンズイ)等々。
・動物達は、感覚器の動員効果のあることを知って、即ち、それを頭で理解して、群れを作っている分けではない。動物行動学(エソロジー)では「同種同志集まっていると、恐怖心が和らぐという本能が有り、それで集まるのだ」と言っている。即ち、動物達の作る群れの吸引力は、この恐怖心緩和の群れ本能なのである。
・そして、その恐怖心緩和の群れ本能で作り出される群れが、偶然に感覚器の動員効果を発揮し、その結果、淘汰原理で優位に選択されて、捕食者の殆どが、群れを作って生活するようになったのである。
・《集団戦闘》こそが、サルの《地上復帰の実力》なのである。

 木の上で生活をしていた猿が、特異な進化を重ねることによって獲得したのが「集団戦闘」の能力だった。現在の、ほぼコミュニケーションだけで成り立っている人間社会を見ると、それも理解できるような気がする。

第1章第3節あらまし

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